ニュース2011

セミナーレポート「第7回NextWebセミナーBtoB・BtoCサイトの次世代Webマーケティング・取り入れるべき共通点・切り分けるべき相違点」。

更新日:2011年10月27日


ターゲットも目的も異なるBtoCサイトとBtoBサイト。しかし、いずれもWebサイトの登場でビジネスの可能性が広がり、さらにここに来てソーシャルメディアが加わることで、どう顧客と向き合うべきか、頭を悩ます企業担当者が増えています。そこで7回目となるNextWebセミナーでは、BtoCおよびBtoBの双方の視点から、最適なWebマーケティングのあり方を考察。3つのセッションから見えてきたのは、意外にもシンプルなヒントだったようです。


BtoBもBtoCも「オープンで継続的な対話」による関係性の強化が課題。

ロフトワーク 代表取締役社長 諏訪光洋氏 講演タイトル

Web制作会社としてBtoCにもBtoBにも関わってきたロフトワークの諏訪氏は冒頭で、AIDMAやAISASの基本であるファネル理論(※見込み顧客が購買に至るまでのプロセスをじょうごに例え、マーケティングのゴール達成に向けて改善点を見つける考え方)が、昨今のソーシャルメディアの台頭により変わりつつあることを指摘。

その上で、「マーケティングの支出の70%~90%が検討・評価の段階に当てられるのに対し、消費者は、評価や絆の段階により大きな影響を受けるようになっている。加えて、他者の支持が購入を促す最も強力なカンフル剤となっていることを考えても、すべての顧客の購入までのマーケティングプロセスを再構築する必要があります。その基本になるのは、顧客の声を聞くことです。」と語りました。

ロフトワーク 諏訪光洋氏 講演

では、BtoCの世界では具体的にどうしているのでしょうか。ここで諏訪氏は、P&GやBEST BUY、スターバックス、良品計画、レナウンなどの取り組みを例に挙げながら、「BtoC企業は、いずれも顧客との関係性を築くためにどうすればよいかを考えている。一方でBtoBはというと、多くの企業で、依然としてせっかくのリードが抜け落ちてしまうようなことを続けている。」と説明。

息をするかの如く当たり前にマーケティングを行ってきたBtoCに対し、BtoBでは長いこと手付かずだったのも事実。しかし、「BtoBの世界でもマーケティングが可能になったのは、Webがもたらした大きな力。」と諏訪氏が語るとおり、企業はWebを手に入れたことで非常に緻密なWebマーケティングが行えるようになり、数値を見ながらPDCAを回し、継続的に改善していくことも可能になったのです。これにより、抜け落ちていたものが改善されると同時に、関係性が重要になり、今や顧客と一緒にイノベーションをしていく時代を迎えています。

こうして企業と顧客の距離が圧倒的に縮まる中で、関係性をどう築いていけばよいのか。それは、「オープンで継続的な対話」を意味する「エンゲージメント」という言葉に集約されます。最後に諏訪氏は、「BtoBもBtoCもエンゲージメントを重視すべきなのは同じ。マーケティングでコントロールできないものが増えつつある中で、関係性を強める努力ならできるはずです。その起点となるのがWebやソーシャルメディア。尻込みしていたら、あっという間に取り残されます。」と語り、「対話のためのツールづくりなら、我々ロフトワークにお任せを!」とアピールしていました。


顧客を囲い込むのではなく、自然と囲い込まれるWebサイトへ。

日立情報システムズ 大川 講演タイトル

第2部では、BtoB企業の代表として、日立情報システムズの鹿島が登壇。インターネットを核としたメディア連携によるデジタルマーケティングから、顧客目線で親和性を高めたインタラクティブマーケティングへの流れを解説。BtoCサイトに学びつつ、BtoBサイトにできること、やるべきことに迫りました。

はじめに、Webコンセプト構築の肝となる顧客経験価値に言及した鹿島は、「サイトに入ってから、その後の流れるプロセスこそが重要。ユーザビリティやアクセシビリティに加え、驚き・楽しさ・面白さ、顧客視点が鍵を握ります。つまり、問合わせや資料請求だけを目指すのではなく、いかに気持ちよくさせて、お気に入りに入れてもらえるかです。たとえば、驚き・楽しさ・面白さが感動や共感を生み、最終的には再訪力や回遊力につながります。」と説明。

さらに、こうしたポイントを踏まえた上でのデジタルマーケティングのあり方について、「営業スタイル変革の時代。なんらかの営業活動をする際は、必ずWebをからめること。これがBtoB企業のこれからのマーケティング方法です。ただし、顧客を囲い込もうとするのは賢明でない。きちんとした情報、ユーザビリティ、エクスペリエンスを顧客が経験できるなら、必ずそのサイトは囲い込まれます。」と強調しました。

そうなると意外に無視できないのが、Webサイトの印象です。「常に見られ、比較され、評価されていることを忘れてはならない。(鹿島)」また、流入ページから目的のページへ、最短ルートで誘導できるサイト構造も必要になります。だからこそ、次のようなマーケティングアクションも重要になってきます。

ベストプラクティス(対競合戦略)
イメージボードコンセンサス(コンセプト共有)
ペルソナ戦略(ターゲットユーザ絞込み)
ユーザビリティ・アナリシス(離脱改善)
ブランド・ダイアローグ(対話型ブランディング)
人間中心設計(クォリスティック・リサーチ)

こうした考え方をベースとしながらも、「これからのマーケティングは、よりインタラクティブ性を高めていく必要がある。お客様の声に耳を傾け、商品開発に生かすということをやっていかないといけない。ただし、サイト側は黒子に徹して、活発な議論を促す潤滑油となるべきです。」と鹿島。一方で、こうした取り組みを実現するための技術面では、次の点に注力すべきであるとしました。

訪問ユーザーの視点で使い勝手を向上
デジタルマーケティングのさらなる追求
サイト管理者視点で利便性を追求

日立情報システムズ 鹿島 講演

また、インタラクティブマーケティングを戦略的に実践していく上で参考にすべきなのが、フィレンツェの街並みだと言います。「一つひとつの屋根の色は違っても、俯瞰すると同じ色に見える。これと同じで、個性を最大限に発揮しつつ、俯瞰してみたときに○○だ!とわかる。そんな、2つの視点から押したり引いたりのブランディングが重要。」と語る鹿島の印象的な言葉に、会場はこれからのマーケティングのあり方を重ね合わせていました。


情報の流れをBtoCからCtoC、さらにはCtoBへ。

良品計画 奥谷孝司氏 講演タイトル

第3部では、株式会社良品計画の奥谷孝司氏をゲストスピーカーに迎え、BtoCサイトの取り組みを紹介。同社の無印良品ネットストアは、「お客様との時間(顧客時間)」を大切にしている点が大きな特徴です。その理由を奥谷氏は、「当社の強みは品揃えであり、お客様の生活の中にたくさん溶け込んでいる。それなら、競合他社がやりきれていない顧客時間を攻めて、お客様との絆を作ろうと考えたのです。」と説明します。

また、具体的な施策を検討するにあたり、260万人の会員動向を調査したところ、60%以上がネットストアを利用しないのにメンバーでいてくれているという事実が判明。つまりこれは、店舗があって初めて会員になってくれているということ。そこで、ネットを利用するのも店舗を利用するのもお客様の時間であり、その両方を大切にしたいとの思いで取り組んだのが次の施策です。

店舗送客
店舗送客施策:ソーシャルメディアからの情報発信による店舗送客
店舗受け取りサービス:ネット注文した商品を店舗で受け取れる(売上は店舗に持たせる)

お客様とのコミュニケーション
ソーシャルメディアを積極的に活用。2011年8月には口コミプラットフォーム「my MUJI」をリリースし、情報の流れをBtoCからCtoC、さらにはCtoBへ。

「従来は、誰に売れているかを見ていなかったのですが、今は、お客様の時間を追えるような双方向ツールでCRMを実施していこうとしています。ソーシャルメディアの広がりは、確実にお客様との時間の共有を可能にしてくれます。ポイントは、いかにネットと店舗を行き来してもらうかです。」と奥谷氏。実際、同社の戦略は次々に成果を生み出しており、その主な内容は次のとおりです。

印良品:有楽町店10周年企画「ありがとうキャンペーン」
「無印良品といえば、〇〇」という質問への回答を募集。twitter®経由のコメントを店頭のデジタルサイネージにもリアルタイムに投影。投稿者の40%が買い物をしてくれた。

Facebook®ページファン数50,000人記念「MUJI GIFT CARD」プレゼントキャンペーン
キャンペーンページを作成し、ネットメンバーIDの有無のみを確認すると抽選で10,000円のMUJI Gift CARDを5名にプレゼント。告知からわずか4日でファン60,000人を達成。さらに最終日には70,000人を達成。

「MUJI to GO」ANA&MUJI PJT(全社プロモ連動)
開発担当者、企画担当者、旅のプロであるCAの対談からトラベル用品開発のヒントを得る企画。そのストーリーの一部始終をソーシャルメディアで発信。1週間で380名の「いいね!」が付いた。

新・足なり直角靴下50,000人のはき心地体験キャンペーン
全国70店舗でリニューアルした定番商品「足なり直角靴下」を配り、その進化した使用感についてお客様にアンケート。約4日で800名くらいの「いいね!」が付き、1,800弱のアンケートを回収。

こうした一連の取り組みを振り返り、奥谷氏は、「ソーシャルメディアとの連携でCtoC的に情報が流れていきます。そこでCtoCを放置しておくのではなく、CtoCを見て、情報の流れをCtoBにし、オウンドメディアにお客様を戻さなくてはなりません。そのためには、my MUJIのような企業プラットフォームが必要になります。」統括。

良品計画 奥谷孝司氏 講演

長期的な視点で、顧客にとってのライフタイムバリューを考え、そのためにソーシャルメディアを活用する。これが同社の考え方であり、奥谷氏は、「当社にとってのソーシャルメディアは、コアなファンが集まるイベント会場。お客様との会話、対話の塊が我々の新しいブランド価値となり、競争優位と模倣困難性を形成することになると信じています。」と力強く語っていました。


全セッション終了後は、ロフトワークの君塚氏をモデレーターに、3名の登壇者によるパネルディスカッションが行われました。話題の中心はBtoCに学ぶBtoBマーケティングのあり方。「小さな積み重ねによって今が生まれるのであり、BtoBだからこそ、より濃密な接点が作れる可能性がある。」との見解には、多くの参加者が勇気付けられたのではないでしょうか。

パネルディスカッション