更新日:2011年03月09日
急激に普及が進む情勢のなかで企業はいつから、どこまで対応すべきなのか?実際の事例を取り上げながら、Webとスマートフォン連携で変わる企業サイトの情報設計と最適なシステム環境についてを解説。今回のゲストスピーカーには、モバイルマーケティングソリューション協議会の専務理事である、岸良征彦氏をお招きして行われました。

モバイルマーケティングソリューション協議会(MMSA)は、携帯電話のサイト、モバイル広告のキャンペーンを制作している会社が集まり、モバイルを活用するマーケティングソリューション市場の健全な発展と成長を促進するべく、消費者の保護に配慮した活動を目的として設立された団体です。その専務理事である岸良氏は、モバイルコンピューティングの黎明期より、業界の様々な基準作りに携わってきました。
社団法人電気通信事業者協会の調査データによると、2011年1月現在、インターネット接続携帯電話の普及状況はドコモ・au・ソフトバンクの3キャリアの合計で9560万人に達しています。広告の分野でも、テレビ・ラジオ・ネット広告が軒並み悪化。一方モバイル広告は3G端末や通信定額制などがさらに普及・定着してユーザーの利用が拡大・進化したことが市場の伸びを後押しし、市場は成長を続けています。平成21年度の情報通信白書でも、コマース1兆円、課金は5千億円の市場規模で、別の調査でもは特にソーシャルメディア上で利用するアバターやゲームのアイテムなどの販売実績が大きくなっていると示しました。野村総研の予測によると、2015年にはネットビジネス市場は18兆円まで拡大すると試算されています。

また岸良氏は、最近ではPCとモバイルを使う人の重複が増えているといいます。特にここ2年では、ゲーム機・TV機からの利用者の数が増加する傾向が見てとれます。以前ならばパソコンがメインで他にも、だったのが、皆が多様な端末を複数台所有するようになったため、マルチデバイスへの対応が必要な時代となっているのです。
起動時間も短く、隙間時間での利用が可能なモバイル行動密着型の認知経路が確立されつつあるモバイルには、企業側も注目。広告に使える総額が変わらないなかでも、よりデジタル、よりモバイルへとシフトしているのです。その事例として音声認識を利用したコーセーコスメポート、QRコードと連動させたルミネマンのキャンペーンなどを紹介しました。
2010年11月に行われたWeb広告研究会のセミナーでも、やってみないとわからない、という結論になったと語った岸良氏。しかし、いまは勝負の時期と指摘し、周りを見ても参考になる事例はないと思われるが、先駆的なイメージを植えつけたいならば、2012年度中にやらなければならないと指摘しました。
岸良氏は、今後スマートフォンは、注目すべきキーワードとなると断言。その根拠として、2012年にはスマートフォンの出荷台数は5割を越え、2015年には従来のフィーチャーフォン契約と逆転するという予測データを提示しました。しかし、現状のサイト表示の状況は、PCサイトをそのまま表示するのが3割超という状況で、今後アプリにしていくのか、ブラウザで対応するのか未知数なのです。

第2部に登壇したのは、日立情報システムズにてマーケティング関係の業務に携わっている森田洋司。このセッションでは、スマートフォンの過渡期にあるなかで、「いまのタイミングで最低限やるべきことはどういったことがあるのか」について語りました。
MM総研によるスマートフォンの市場成長予測では、2011年から大きく伸びると考えられていますが、ある調査によると使用用途で最も多いのがWebサイトの閲覧。その割合は9割を超えおり、Android®端末のユーザーは20~49歳の男性が多く、iPhone®端末のユーザーは男女比率はほぼ半分で、20~34歳の女性が多いというデータが出ています。そこから考えた実施すべきスマートフォン対応は、「スマートフォン専用サイトを立ち上げる」ことと、「スマートフォンを活用した集客施策を検討・実施する」ことです。

スマートフォン専用サイトを立ち上げる
利用用途が多いWeb閲覧を現状のPC版と同じフルブラウザーで行うことは可能ですが、表示領域が限られてしまうため、ユーザビリティは低くなってしまいます。サイトの立ち上げには、iPhone®、Android®というそれぞれのスマートフォンの特性を理解しましょう。また、スマートフォンのWebサイトに限った話ではないのですが、表現力を増し、サイトのサイズを軽量化できる点などの利点からHTML5で作成するのが良いと推察されます。サイトの設計には、ユーザビリティを考慮したレイアウト設計を行うことも大切です。
スマートフォンを活用した集客施策を検討・実施する
スマートフォンを取り巻くマーケティング環境はどうなのでしょうか。アンケートデータで見ると、Web閲覧に続くものとしては、アプリケーションの活用やニュースやSNS、ブログの閲覧が上位になっています。利用頻度の高いものを集客チャネルとして捉えることが重要です。そこでソーシャルメディアを利用して集客を狙うことが検討すべきなのですが、安易にアカウントを開設してはいけません。
ソーシャルメディアを企業活用するときの注意点
そしてソーシャルメディアを活用した広告について説明し、スマートフォンの機能を活かした広告技術やユーザーの利用シーンを踏まえたプロモーションの準備・実行をすることが大切だと語りました。

最後に登壇したロフトワークの諏訪氏は、「2013年までに、全世界を通じ、携帯電話がPCに代わってインターネット・アクセスの最も一般的なデバイスになる」という考えから、企業がiPhone®/Android®への対応をどう始めるべきかについて語りました。
「2010年は企業がtwitter®に惑わされた年でしたが、2011年から2012年はiPhone®に対応できているか否かが問われています。しかし、現状は何をしたらいいのか、コンセンサスが取れていないのです。成功するアプリと失敗するアプリがありますが、成功するのは固定のウェブユーザーを持っていたり、ECなどの固定のサービスを持っている長期滞在型のアプリが成功しています。どうしてもアプリとなると一過性のものを作りたくなりますが、骨子となるサービスがないと、1週間ぐらいで消え去ってしまうものとなってしまいます。参加できる仕掛けや対話の構造がスマートフォンのなかにも必要なのです。」

では、対話に参加してもらうには何が必要なのでしょうか?諏訪は、Webを基本とした情報発信とコミュニケーションだと考えています。データをHTML化し、CMSに格納し、モバイルを中心としたデバイス、アプリ、トレンドに柔軟に対応できるようにすること。そのうえで、顧客に対するサービスと潜在顧客向けのサービスという2つの軸それぞれを考えなくてはならないと言います。
そして、2つの軸をきちんと考えていくことによって、企業各々の答えが見えてくるのではないかとまとめました。
最後に、3名が再び登壇し、「Webとスマートフォン連携」をテーマにトークセッションが行いました。

モデレーターの「15年前のホームページをみんながやるからやりましょうという雰囲気に似ている」という言葉を契機にスタートしたセッション。ロフトワーク諏訪氏は「アクセス解析などある程度のツールがそろっているから、10年前、20年前よりもやりやすくなっています。モバイルになると、よりいっそう対話だったり明確に向き合っていかなくてはならないですね。」と語りました。岸良氏も皆悩んでいるのは同じとしたうえで、「担当者同士の横の連絡がとれていない。SNSが出てきたおかげで横のつながりがしやすくなってきたが、私だけが持っている、あなただけが持っているという情報がある。」と指摘。森田も「どこかで情報が出るのを待つのではなく、自分たちで探して、それに合う形で何かをしていくべきではないか。」と語りました。